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神戸家庭裁判所 平成3年(家)3035号・平3年(家)3036号

主文

相手方は、申立人が下記条件のもとに、未成年者両名と面接することを妨げてはならない。

1  面接回数 月1回。

2  面接の日時 月曜日から金曜日までの間のいずれかの午前中。

申立人は、具体的な面接日、時間の設定につき、予め○○乳児院と協議して定める。

3  面接場所 神戸市中央区○○○通×丁目××番××号

社会福祉法人神戸○○塾○○乳児院内。

4  面接方法 弁護士○○○○および○○乳児院の職員1名が同席する。

理由

一  当裁判所平成2年(家イ)第××号夫婦関係調整事件記録、当裁判所調査官○○○○作成の各調査報告書、並びに申立人および相手方に対する各審問の結果によれば、次の事実が認められる。

1  申立人と相手方は、平成元年1月28日結婚し、同年10月19日未成年者真帆(長女)、同智徳(長男)の双生児をもうけた。

2  申立人と相手方は、結婚当時は、兵庫県加古郡○○町所在のマンションで夫婦2人で生活していたが、未成年者両名の誕生後は、申立人の実父が独り住まいする申立人の実家(神戸市長田区○○○所在)が広いこともあって、同実家に移り、実父を含め家族も5人で生活することとなった。

3  ところが、申立人とその父は、申立人が未成年者両名の世話と家事に追われ、心労の毎日であるにもかかわらず、相手方がこれに協力せず、また相手方の母もその手伝いをしないとして、次第に相手方らに対し不満感をつのらせ、他方相手方の母は、申立人に手伝いを申し出ても明確な返事をせず、また相手方の母としては精一杯の助力をしたのに、申立人において全く感謝の言葉を述べないとして、申立人およびその父に対し悪感情を持つに至った。

4  そして、申立人は、未成年者両名の育児と家事に疲れ果てたあげく、同年12月1日、未成年者両名を父に託し、買物に行くと告げて、40万円を勝手に持ち出して、単身東京へ家出した。申立人が東京に家出したことを、申立人からの連絡によって知ったその父は、相手方の母に対しては未成年者両名を引き取って、その世話に当たることを、相手方に対しては自分ら上京して、申立人を連れ戻すことを要求し、これに対し、相手方の母は、申立人の家出を母親として許し難い行為として強く非難するとともに、申立人の家出は、同人の父がそそのかしたものと考えて(相手方とその母は、従前より、申立人とその父が異常なほどの一体感で結び付いていると考えていた)憤慨し、また相手方においても自ら申立人を連れ戻しに行くことを拒み、これにより両家が一層感情的に対立するに至った。

5  結局、申立人の父が、翌2日、東京に出向いて、申立人を実家に連れ戻したが、未成年者両名は相手方の実家に引き取られた。

6  申立人は、同月4日、神戸○○○○○病院神経科で診察をうけ、産後の過労による精神不安定と診断された。

7  その後、申立人は昼間は相手方実家に出向いて、未成年者両名の養育に当たるが、夜間は自己の実家に戻って暮らすという生活をしていたが、同月10日、申立人と相手方は、前記のような事情により、兎角円満を欠くに至った夫婦関係を今1度やり直すべく、未成年者両名を伴って、自宅である前記○○町所在のマンションに戻った。

8  ところが、相手方の母は、申立人、相手方らのことを心配して、週に4日程度上記マンションを訪れ、その都度申立人のやり方に不満を持ち、他方、申立人は、相手方母の助言、指摘を自分に対する嫌がらせと受け取り、勤務中の相手方に電話して愚痴を述べ、あるいは実家の父に対し実家に帰りたい旨を訴えていたが、平成2年1月14日早朝、相手方および相手方母の就寝中に、未成年者両名を残したまま、無断で、単身単車に乗って、実父のもとに帰った。上記家出につき、申立人とその父は、相手方母が産後間もない申立人に辛く当たり、それを相手方がとめなかったことがその原因であると主張し、他方、相手方およびその母は、申立人がその父にそそのかされ、妻、および母親としての役割を放棄したものであると主張し、双方の対立が一層激化するに至った。

9  そして、その後同月19日、未成年者が発熱したとの相手方からの連絡により、申立人が自宅のマンションに帰ったところ、相手方の母より厳しく叱責され、恐怖心をつのらせた申立人は、以後相手方およびその母から幾度か、自宅に戻って、未成年者両名の養育に当たるよう求められても、これに応じなかった。

10  相手方は、これより先、同月17日、申立人との夫婦関係の円満を求める夫婦関係調整の調停を当裁判所に申し立て(平成2年(家イ)第××号事件)、その調停中である同年7月3日、申立人は神戸大学医学部医師の診察をうけ、医師に対し、睡眠障害(中間覚醒)および抑うつ感を訴えたが、同症状は、少量の薬物使用によって同月19日頃には両症状ともほぼ消失し、通常の日常生活を営むことができるようになった。

11  一方、相手方においては、未成年者両名を引き取ったものの、相手方も、その母も就労していて、未成年者両名を養育することが困難であったので、引取り後間もなく、同人らを託児所「神戸○○○園」に一時預けた後、同年3月7日より、児童相談所の措置により、社会福祉法人○○乳児院に預け、現在に至っている。なお、相手方は、その頃より肩書住所地の実家に帰り、母とともに暮らしている。また、週末には、未成年者両名を自宅に連れ帰っている。

12  相手方は、未成年者両名を託児所「神戸○○○○園」に預けたことを申立人に知らせず、未成年者両名の居所を教えてほしい旨の申立人からの度々の申入れにも応じないでいたところ、申立人は、自力で種々調査して、未成年者両名の居所を突き止め、同園に赴いて、未成年者両名と面接中、相手方とその母に見付かって、激しく非難され、そのまま帰宅した。その後、未成年者両名が○○乳児院に預けられていることを知り、同院に対し、度々未成年者両名との面接を申し入れたが、同院においては、相手方が、申立人と未成年者両名との面接を許諾しないため、申立人の上記申入れを断っている。したがって、申立人は、前記託児所「神戸○○○○園」で一度未成年者両名と面接して以後、現在まで未成年者両名とは面接していない。

13  申立人は、同年4月17日、未成年者両名との面接交渉を求めて、本審判手続に先行する調停の申立てをしたが、相手方において強くこれを拒否したため、同調停は不成立となり、審判手続に移行した(前記夫婦関係調整事件も同日不成立となった)。

相手方が、申立人と未成年者両名との面接交渉を拒む理由として挙げるところのものは、申立人が母親として失格であること、申立人の精神状態が不安定であるため、未成年者両名との面接中に、不測の行動に出る危険性があること、これまで母親の顔を知らずに、相手方とその母のみによって監護養育されてきた未成年者両名に申立人を面接させると、未成年者両名と相手方およびその母との間の安定した関係を混乱させ、未成年者両名の精神状態を不安定にすること、申立人とその父とは異常なまでに一体感を有し、申立人は父親にそそのかされて、どのような行動にでるやも知れないというにある。

14  申立人は、平成3年6月より、店員として稼働している。また、相手方は、申立人との離婚(親権者は父である相手方)を求める調停を神戸家庭裁判所尼崎支部に申し立て、現在係属中である。

二  以上の事実により、申立人と未成年者両名との面接交渉の許否につき検討する。

1  相手方は、先ず、申立人は母親として失格である旨主張する。確かに、申立人が2度にわたり未成年者両名を放置して、単身家出したことは、母親としての自覚に欠ける行為であって、申立人においても十分に反省しなければならない点ではある。しかし、他方、申立人にとっては、初めての育児であり、しかも双生児の養育という、通常の一人の子の育児に比べて、苦労が多かったうえに、周囲との人間関係がうまく調和せず、精神的に不安定をきたしたことから、前記のような家出に及んだもので、必ずしも未成年者両名に対する愛情の欠如に起因するものではないと考えられるから(このことは、申立人が相手方から未成年者両名の所在を知らされなくなって以後、必死になって、その行方を探し求めたこと、また未成年者両名の○○乳児院での状態を、当裁判所調査官から聞きたがっていたことによっても、明らかである)、上記のような家出行為があったからといって、申立人から未成年者両名との面接交渉権を奪うことは、余りにも母である申立人に酷な扱いといわねばならない。

2  また、相手方は、申立人の精神状態が不安定であることを理由に、未成年者両名との面接中不測の行動にでる危険性があることを懸念するが、前記10において認定の事実、当裁判所医務室技官○○○○作成の報告書、並びに前記14において認定のとおり、申立人は現在通常人と同様に稼働していることを併せ考えると、申立人においては、現在、未成年者両名との面接の支障となるような病的症状はないということができる。加えて、後記のとおり、申立人と未成年者両名との面接の場所は、○○乳児院内であり、かつ面接に際しては、申立人代理人弁護士○○○○、及び同乳児院の職員が同席するので、上記の点を理由として、申立人と未成年者両名の面接を否定することはできない。

3  更に、相手方は、申立人と未成年者両名との面接交渉は、現在の相手方およびその母と未成年者両名との間のこれまでの安定した関係を混乱させ、未成年者両名の精神状態を不安定にする旨主張する。確かに、未成年者両名は、現在満2才で、人見知りをする時期でもあるので、申立人との面接の当初は、未成年者両名において、一時的に動揺することがあるかもしれない。しかし、一人でも多くの人に愛されることは、子にとって幸福なことであり、特にそれが実の母であってみれば、なお一層そのようにいうことができるのであるから、長期的には、申立人との面接交渉は、未成年者両名の福祉に適うというべきである。

4  相手方は、申立人がその父にそそのかされて、不測の行動にでる旨主張するが、これを認めるに足る証拠はなく、しかも本件は、未成年者両名を申立人のもとに引き取らせるものではなく、未成年者両名との面接交渉(しかも、上述のような条件のもとでの面接交渉)であるので、上記理由をもって、申立人と未成年者両名との面接交渉を否定することはできない。

5  相手方およびその母が、これまで未成年者両名の監護養育に種々配慮し、力を尽くしてきたことは、前記認定の事実から、十分に看取しうるところであるが、上記に述べた理由から、本件申立てはこれを認容するのが相当である。しかし、本件面接交渉についての相手方の危惧も十分理解できるので、面接交渉の場所を○○乳児院内とし、申立人代理人弁護士○○○○、および同乳児院の職員同席のもとに行わせることとする。そして、未成年者両名の年令、並びに相手方が週末には未成年者両名を自宅に連れ帰っていること、その他諸般の事情を考慮し、面接の回数を月1回、面接日は月曜日から金曜日の間のいずれかの日の午前中と定める。また、具体的な面接日、時間の設定については、申立人は乳児院と予め協議して定めるものとする。

6  以上により、相手方は、上記条件のもとに、申立人が未成年者両名と面接することを、また○○乳児院が申立人と未成年者両名の面接を認めることを妨げてはならないというべきである。

よって、主文のとおり審判する。

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